コミュニティを活性化させるための戦略

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「某オンラインサロンプラットフォームの売上高の80%は20%のコミュニティが支えている」という話があるように、約80%のコミュニティは運営にかなり苦戦をしているようです。

実際に、「コミュニティを始めたのに盛り上がらない」という声をよく聞きます。そのような方に向けて、今回はコミュニティを活性化させるための戦略について書いていきます。

コミュニティ活性化の戦略はイノベーター理論で考える

イノベーター理論とは、スタンフォード大学のエベレット・M・ロジャーズ教授が「イノベーション普及学」という著書の中で1962年に提唱したものです。イノベーター理論は、普及の過程を5つのレイヤーに分類して、それを基にマーケティング戦略や、市場のライフサイクルについて検討することを推奨しています。

イノベーター理論は、コミュニティ運営においても重要な指標になります。例えば、コミュニティでプロジェクトやイベントを起ち上げた場合、イノベーター理論の比率と同様のラインで参加者が集まるからです。

イノベーター理論の5つのタイプについて

この章では、コミュニティ視点でイノベーター理論を解説していきます。

イノベーター(革新者)

コミュニティでプロジェクトやイベントを起ち上げた時に、最初に手を挙げるのがイノベーター層です。イノベーターは情報感度が高く、新しいものを積極的に導入する好奇心を持った層で、「最先端」という部分を重視する人たちです。

コミュニティで展開される「新しいこと」に価値を感じて、自分の価値観に合致したモノであれば恐れずに手を挙げて参加してくれます。

<特徴>

  • コミュニティ全体の2.5%を構成する
  • 冒険的で新しい企画が出ると進んで手を挙げる
  • 新しいモノ好き
  • シリーズ化されている企画の場合は、自分が興味を持っている企画であれば詳細がなくても参加表明をします

アーリーアダプター(初期採用者)

これから面白い展開になるかもしれない企画やプロジェクトにいち早く目をつけて、良いと判断したものに対して積極的に手を挙げるのがアーリーアダプター層です。

アーリーアダプターは世間やトレンドに敏感で、常にアンテナを高く張って情報を判断して、これから流行りそうなものを選んで採用するので、コミュニティ内部でのオピニオンリーダーやインフルエンサーにもなりやすい層です。

アーリーアダプターはこの後の層(アーリーマジョリティやレイトマジョリティ)に対する影響力も大きく、5つの層の中でもアーリーアダプターの攻略は重要だと言われています。

<特徴>

  • コミュニティ全体の13.5%を構成する
  • 市場のトレンドに敏感で、常にアンテナを張って自ら情報収集を行い判断する
  • 流行をつくることに優越感を持つ
  • 従来のモノに比べて具体的なメリットが判断する

アーリーマジョリティ(前期追随者)

情報感度は比較的高いものの、新しいプロジェクトやイベントに慎重なのが、アーリーマジョリティという層です。

アーリーマジョリティは、アーリーアダプターの意見に大きく影響を受けます。コミュニティにコンテンツを浸透させるための媒介層であることから、「ブリッジピープル」とも呼びます。

アーリーマジョリティを開拓するためにはアーリーアダプターをきちんと攻略することと、企画やプロジェクトを実施する合理性をきちんと説明できなければなりません。

<特徴>

  • 市場全体の34%を構成する
  • 新しいイベントやプロジェクトに参加するのに比較的慎重
  • 流行に乗り遅れることに恐怖を持っているが、手を挙げるタイミングは流行が始まっていること
  • 慎重ではあるものの、全体の平均よりも早く新しいモノを取り入れる

レイトマジョリティ(後期追随者)

新しいイベントやプロジェクトについては消極的で、なかなか参加しないのがレイトマジョリティ層です。

この層は、過半数を超える多くのメンバーが参加しているという実績を見て確証を得てから参加します。新しいコンテンツを受け入れることに対しては不安材料の方が多く、周りの動向を伺い、周りと同じ選択をすることで安心感を得て行動を決定する人たちです。

<特徴>

  • 市場全体の34%を構成
  • 新しい企画やプロジェクトに手を挙げるには懐疑的
  • 周囲の大多数が参加しているという確証があって初めて参加を選択する

ラガード(遅滞者) 

ラガードは市場の中でも最も保守的な層で、その企画やプロジェクトがただ普及するだけではなく、伝統的、文化的なレベルまでその企画が一般的にならないと採用しない層です。最後まで新しいコトを受け入れません。

ラガードを攻略するためには、すでにその企画やプロジェクトがコミュニティの定番になっていることが条件で、安心できることを訴求する必要があります。

<特徴>

  • 市場全体の16%を構成する
  • もっとも保守的なグループ
  • 新しい企画に比べて安心感があること
  • トレンドや世の中の動きに関心が薄く、イノベーションが伝統になるまで採用しない

コミュニティの運営者が乗り越えるべき壁

エベレット・M・ロジャース教授が記した書籍「イノベーション普及学」の中で、イノベーターとアーリーアダプターを合わせた16%をどのように攻略するかが製品やサービスを普及する分岐点と述べていますが、コミュニティの活性化に置き換えてもこの16%の攻略が分岐点になります。これを「普及率16%の論理」として提唱されています。

この論理を補足するように、マーケティングコンサルタントのジェフリー・A・ムーア氏は、イノベーターとアーリーアダプターを「初期市場」アーリーマジョリティ以降の3つの層を「メインストリーム市場」と名付けました。そして、この2つの市場の間には「キャズム」と呼ばれる深い溝がありまして、この溝を超えることが市場開拓には重要だとする「キャズム理論」を提唱しました。

キャズムが生まれる理由

出処:ワンマーケティング株式会社

キャズムが発生する理由は、初期市場とメインストリーム市場の2つの市場のプレーヤーの価値観の違いにあります。

キャズム理論によると、初期市場に属する方は「新しさ」を求める傾向があり、企画やプロジェクトがもたらすメリットについても着目しますが、新しいモノだからこそ他の多くの人よりも一歩進んでいることに価値を感じて参加(又は購入)します。

一方の、メインストリーム市場に属する方は「安心感」を重視する傾向があり、大勢の人が参加(又は購入)しているという安心感と時代に取り残されたくないという双方の感情から参加を決定します。

初期市場の16%を満足させたとしても、メインストリーム市場に属するプレーヤーは「たかが16%程度で」という見方をするので、初期市場を制しただけではメインストリーム市場を動かすには不十分なのです。初期市場を制し、アーリーアダプターを動かして、そこまでしてようやくメインストリーム市場を動かす資格が得られるのです。

コロナの影響で在宅ワークがはじまってオンラインビデオ会議需要が高まりましたが、その時に起こったのが「Zoomのセキュリティ問題」でした。「危ないから使わない方がいいんじゃないか?」という声も多くありましたが、それでも大勢の人がZoomを使い続けて市場に安心感が広まった結果、Zoom社の第一四半期の売上高が169%になったと発表されました(2020年6月2日発表)。

Zoom社のように逆境を乗り越えて安心感を浸透させるのは容易ではありませんが、ビジネスでもコミュニティでもメインストリーム市場を巻きこむことがスケールさせるために大切になります。

キャズムを乗り越えるためにコミュニティマネージャーが取り組むべきこと

キャズムのメカニズムが分かったところで、壁の乗り越え方について解説します。答えとしては、初期市場とメインストリーム市場を分けて考えることです。

初期市場の攻略法は、「最先端」「1番乗り」「新技術」と言った文脈で企画やプロジェクトを創り、参加者に訴えることが大切です。

一方の、メインストリーム市場の攻略法は、「安心感」「使いやすさ」「みんな使っている」という文脈で生活に溶け込むような身近なもので企画やプロジェクトを創ってアピールするようにします。メインストリーム市場への訴求では、大胆なキャッチコピーはむしろ逆効果で、尖っていない方が魅力になります。

キャズムを乗り越えてコミュニティを活性化させるために、コミュニティマネージャーはイベントやプロジェクトの企画や表現を工夫しながら、アーリーアダプター層を動かしていくことがポイントです。


キャズムを超えられないコミュニティは、当初の予想よりも発展せずに、衰退の道をたどってしまう場合があります。

そうならないためにも、コミュニティマネージャーやコミュニティデザイナーはアーリーアダプターを攻略して、コミュニティを盛り上げていってほしいと願っています。

最後までお読みいただきありがとうございました。